【体験談】10x CellPlex 使用経験後 感想

以前、CellPlexを用いて10xでのsingle cell解析を行いました。

詳細はこちら;https://hilablife.blog/wp-admin/post.php?post=96&action=edit

NGSまで終わり、解析を行っていますが、CellPlexを使用した感想を記載します。

手順としてはどうだったか

以前にも記載しましたが、初めての実験でしたので、少し勝手がわからなかったところがありました。

通常の10xを行うよりもプラス3時間(初めてで)くらいかかりました。

主な原因は「慣れていないこと」と「『CellPlexで多sampleで一度に解析できるからどうせならたくさんやろう』と多くの sample同時にやったこと」ですかね。

CellPlexではwash工程が多いので、その分sample数が多いと吸引等の時間がかかることになりました。

時間がかかることでqualityは落ちたか?

解析している分にはqualityが落ちている印象はありません。培養細胞をsingle cellにして凍結保存、解凍後は上記のように3-4時間で(FACSで死細胞除去、doublet除去して)10x処理している分にはほとんど遺伝子数の少ない細胞やミトコンドリア遺伝子の割合が上昇している細胞は認めませんでした。

別のCellPlexを用いていないけれども、in vivoのsampleで処理に手間取ったりする方がqualityが落ちている印象があります。

そのため、元々がlow-qulityが予想される細胞を用いる場合には余分に時間がかかるため、さらに細胞にダメージが生じるため、避けた方がいいのかもしれません。

multipletはどうなるのか?

CellPlexのウリの一つであるcell multiplex oligo(CMO)により、CellRangerレベルでmultiplet除去が可能とのことでしたが、確かにmultiplet除去がされていました。

その割合は、10xのprotocol(https://assets.ctfassets.net/an68im79xiti/4FL8JyLH3QQvs0HjqjrJiD/efa9f8965e169c4d2a28345e2ac65d1f/CG000388_ChromiumNextGEMSingleCell3-v3.1_CellMultiplexing_Rev_A.pdf) の通りでした。

(上記protocolから抜粋)

私の場合はrecovery 7000くらいで4%くらい。10000くらいで7.5%くらいでほぼ同じでした。

また、タグ付けされていない集団も出現し、解析から弾かれるのすが、cell recoveryによらず2-3%くらいでした。

これによりsample間でのmultipletは理論上は存在しないことになります。

データを解析しても、追加でmultiplet除去は必要ないのではないか、という印象でした。

Batch effectはなくなったか?

今回の実験では数sampleを混ぜ合わせて、それを半分ずつにして10xを実行しました。つまりduplicateとして2 batch設定しました。

すると、その2 batch間のデータは完全にoverlapしたため、10x→ライブラリー作成までの過程においてのbatch effectはないと解釈できます。

しかし、使ったsampleが一度凍結したものであるからか、それとも元々の細胞の状態が違うからか、sample間での差は大きく認めました。

同一細胞状態において、凍結方法を変えてみる、とかしたら凍結作業でbatch effectが生じているのか、細胞の状態がsample間で大きく異なるかの評価ができたでしょうが、そこまではしていないため、batch effectに関してはいつまで経っても悩ましい問題です。

10x実施前までは面倒だが、10x実行後はとても楽

FACS等の処理を一度にたくさんするのは大変ですが、10xまでの工程までたどり着ければ、ライブラリー作成等のより時間のかかる工程を2-3 duplicateの処理で済ませられるので、確かにsample数が多い場合にはよい可能性が高いです。

また、Gel beadsや試薬等の必要量も少ないので、確かに経済的だと感じます。

デメリット

デメリットとしては

  • 細胞数が少ないとwashで細胞がなくなっていく可能性が高いこと
  • 希少な集団を見つけにいく場合には検出力が低下する可能性が高いこと

が考えられます。

まとめ

個人的にはコストや楽さを考えると5-8 sampleでのcellplexなら全然やっていきたいと思います。

一応12 sampleまでいけるそうですが、そうなると最終的な解析に至る細胞数が少なくなりそうなことや、handlingのことを考えると8sampleくらいが個人的な限界な気がします。

ただ、それくらいを頑張れば10xのコスト面でも、ライブラリー作成の面倒くささからも開放されるので、頑張る価値ありだと思います。

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