10xでDNA合成を行ったのちに、その生成されたDNAがちゃんと既定の長さでfragmentationされた後に、libraryを入れて、NGSにかけられるかチェックするために、DNAの長さを測定します。
そのために、定量的にDNAの長さを測定する必要があるので、通常の電気泳動ではいけません。
10xではBionanalyer, TapeStation, LabChip, Fragment Analyzerでチェックすることを推奨しています。
当研究室ではLabChipを用いてDNAを定量しているため、その時の体験談を記載していきます。
LabChipとはなにか
上記の通り、根本原理的にはDNA(のみならず、RNA、タンパク質にも使えますが)に対して、ゲル電気泳動を行うことでDNAを長さで分離しよう、というもの。
LabChipで特徴的なことが
- 機械制御で大量のサンプルに対して一度に解析できる。そして早い。
- 電気泳動において、markerをおくことで、サンプル間の比較を可能にする
ということです。
LabChip 技術により大量のサンプルを一度に解析できる
PerkinElmer社のLabChip GX touchのHP;https://www.perkinelmer.co.jp/dnarna/tabid/1851/Default.aspx
このように複雑かつ極細の流路を用いることで大量のサンプルを”一度に”、”素早く”解析することができる。
Bio-Rad社の384 plateを用いて次々と解析してくれました。
youtubeに良い解説動画がありました。;https://www.perkinelmer.co.jp/dnarna/tabid/1851/Default.aspx
Markerは測定したいDNAの長さにより試薬を購入します。lower merkerとupper marker(7000bpなど試薬により異なる)によって、サンプルならびにladderにおける、lowerとupperの基準を決めることができる。
Ladderは普通の電気泳動と同じように、数百bp間隔でladderが出てくる。
Gel-DyeはGelとDyeを使用前に混ぜます。Gelは高価らしいです。DyeにはDNAに結合すると蛍光物質を発するらしく、それをdetection 部位にてとらえます。
上記にloadして流します。
流路の流れは下記の通り
- Sipperからサンプルを吸引
- Sipperの部分でmarkerとGel-Dyeを混合液にサンプル or ladderが混ざる
- 3と8の間に電圧がかかり、流路にサンプル+ladderで満たされる
- 7と10の間に電圧がかかり、ピコリットルレベルのごく少量が10の方向に進む。
- サンプルが電気泳動により分離される
- DNAについたDyeは蛍光を発するため、それをdetection areaでレーザーによって感知する。
とのことです。すごい技術です。当たり前ですが、この流路が技術の命なので、丁寧に扱いましょう。
サンプル間の比較
普段の電気泳動ではあまり気にしていなかったのですが、電気泳動ではサンプル間の比較を丁寧にするのは難しいらしいです。
具体的には、スマイリング現象やバックグラウンドの差によって正確にレーン毎に比較するのは難しい。
- スマイリング現象;電気泳動でレーンごとに微妙に電圧が変わり、特に両端での流れが遅くなる。そのため、本来一直線であるべき同一DNAであっても、両端が上がっているように見える現象(スマイル)
- バックグラウンド現象;PCR産物を電気泳動で流す際などで、PCRのための酵素やbufferにより、バックグラウンドが強くでてしまう。
それをLabChipで可能にしたのが、内部標準(=marker)の存在。
LabChip HPでも解説ページがあります。https://www.perkinelmer.co.jp/Portals/0/resource/products_ls/dnarna/pdf/150304_02_FunctionsOfLMandUM.pdf
これらに対して、ごく少量の溶液のみを電気泳動し、また、常に同一のmarkerを用いることで補正することができる。
トラブルシューティングはよく読もう
電気泳動一つをとってもかなり奥が深いですね。。考え出したらキリがない。
試薬の説明書にトラブルシューティングが載っていて、電気泳動一般における注意事項にも共通する内容であるので、勉強になります。
LabChip, NGS 3K 試薬のuser guide https://www.perkinelmer.co.jp/Portals/0/resource/products_ls/dnarna/pdf/GX_UserGuide20200421/DNANGS3K_UserGuide_CLS145099_Rev.G.pdf
まとめ
LabChipを初めて使ってみました。
感想は、「とても簡単で使いやすい!」でした。
すぐ使えるようになると思いますが、流路には注意することと、Gelは高いので無駄遣いしないことに注意しましょう。